今日、ご紹介する本はこちらです。
斎藤洋 作
『白狐魔記 源平の風』
この本の主人公は、一匹のきつねです。
まだ若く、親からひとりだちしたばかりのこのきつね。
このきつねが、白駒山の仙人の弟子となり、修行に励みます。
厳しい修行の末、人間に化けられるようになったきつねは、
仙人から「白狐魔丸(しらこままる)」の名前をもらい、
人間の中で生きることにより人間とはどのようなものなのかを考える旅に出ることになります。
「源平の風」は白狐魔丸の旅、第一巻です。
「源平」という言葉から、既にぴんときている方もおおくいらっしゃるとは思いますが、
今回、白狐魔丸は「源平の戦い」に巻き込まれてしまいます。
「源平の戦い」
それは、1180年の後白河法皇の皇子・以仁王による平家追討の令旨から、1185年に壇之浦の戦いまでの6年間の内乱を指します。
源平合戦によって、栄華を極めた平家の一族は壇之浦で滅び、源頼朝を中心とする坂東(関東)の武士による鎌倉幕府が樹立されるのです。
白狐魔丸は、兄頼朝に追われ、落ちゆく源義経一行に同行し、
武士の無常を目の当たりにすることになるのです。
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前回の岡田淳さんに加え、
今回の作者、斎藤洋さんも児童書作家として著名な作家さんのおひとりでしょう。
斎藤洋さんの作品は、
とくに男の子に人気があるという印象を受けます。
この『白狐魔記』シリーズは、『天保の虹』までの全7巻で完結しています。
その本のそれぞれで、白狐魔丸は歴史上の重要人物と出会い、交流を繰り返します。
歴史がすきなお子さんはもちろんですが、
まだ歴史を習い始めていないお子さんや、関心がないお子さんの入口としても
役立てる一冊だと思います。
読書感想文にぴったりな考えさせられる一冊ですが、
白狐魔丸の冒険に惹かれ、夏休みで一気読み!なんてことも有り得るシリーズです。
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わたくしは比較的、歴史に関心がある方ですが、
歴史が得意ではないお子さんにも好評を得ている一冊です。
この物語は主人公が「きつね」だということもあり、
完全な歴史小説ではなく、
子どもたちに親しみやすい作品になっているからかもしれません。
人間ではない「きつね」の視点を通して見つめ直すことで、
当たり前のように考えていた歴史の違う側面を発見し、
心を揺り動かされることが間違いない作品です。
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お子さんたちは読書を楽しんでいらっしゃいますでしょうか。
昨今、よくお伺いするのは、
スマートフォンやパソコンに齧りついているお子さんが多いというご相談です。
わたくしは、特にYoutubeなどの娯楽を否定するつもりはありません。
なぜなら、お子さんを育てていらっしゃるお父さまやお母さまも、
その娯楽を楽しんでいらっしゃるご家庭が多いからです。
それなら、いっそのこと、一緒になって楽しんでしまうのはいかがでしょうか。
Youtubeを一緒に30分見たら、寝る前に同じだけ読書の時間をとる。
その約束事を守らなければ、スマートフォンは渡さない。
これだけでも守ることが出来れば、毎日の読書習慣ができていきます。
初めは読みやすい本からで構いません。
まずは、「読書習慣を作ること」。
そこから始めていきましょう。
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『白狐魔記 源平の風』斎藤洋

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